進路指導の教員こそ考えてほしい!その仕事、将来性ありますか?

今回のテーマは【進路指導】と【仕事の将来性】です。

現職で教員をしているわけではないですが、教員免許を持つ1人として、将来を考える子どもたちにこういう事も伝えていきたいな〜と思う事をまとめます。

グローバル化に伴い「英語を使う仕事をしたい」「海外で働きたい」と言う夢を持つ子どもも増えていると思います。もちろん夢を持つのは立派で素敵だけど、ライバルがたくさんいるという真実を教えてあげる事も、教員として、時には必要だと思っています。

その仕事、数年後も存在していますか?

刺激的なタイトルになってしまいましたが、まずはこれを考えてください。

「英語を使う仕事」と聞いて、あなたは何が思いつきますか?

  • 翻訳
  • 通訳
  • ツアーコンダクター
  • 外交官
  • キャビンアテンダント
  • 海外赴任
  • 現地企業への就職  など。

細かく分類すれば、もっと種類があります。

こうした職業に憧れを持つ生徒に対して、あなただったらどのような生徒指導を行うでしょうか?

「英語ならこの大学が強いよ。」

「語学系だったら、この大学は就職率も良いよ。」

「その職業、この大学なら卒業生が行ってるし、専門性も高いよ。」

う〜ん、確かにそれは事実で、嘘ではないけれど。その職業そのものについて、もっと知識を深めると言うのも進路指導の1つだと思うんです。

今や、ロボットやAIが発達し、スーパーのレジや工場の荷卸し、ホテルのチェックイン、自動車の運転が、どんどん自動化していますよね。人口が減り、働き手も減る日本にとって、業務の自動化・ロボット化は、ごく自然な選択肢です。ミスが無くなったり、人件費が抑えられたり、と言うメリットもあるのです。

しかし、逆を言えばその働き手が必要なくなるという事。

これから社会に出る中高生にとっては、ただ単に今ある職業に憧れ、それに向かって努力するだけでは越えられない大きな問題です。

小さい頃からあの職業に憧れていて、ずっとなりたかった。

憧れの職業に就くために、受験も試験も頑張ったのに、

憧れだった職業は、今やロボットの役割に。。。

なんてことも、十分あり得ます。冗談でもなく、ずっと先の未来の話でもなく、数年以内に。

求められる英語力は日々変わっている。英語力の時代差。

では次は、英語力の時代差について見ていきましょう。

日本に観光に来る外国人にとって、「日本人は英語が出来ない」というのは常識のようなものだそうです。

というのも、日本は、つい160年前まで鎖国を、72年前まで戦争をしていました。この間、一般庶民は外国との関わりのほとんどを禁止され、外国から来た宗教までも禁止の対象とされていたそうです。

その頃、外国語を話せるというスキルは相当珍しいものだったでしょう。政府に認められた信頼できる一部の人間だけが、それを仕事にしていました。

それが今となっては、日本企業は世界を相手に貿易し、一般庶民でも、世界一信頼されているパスポートを手にして海外に旅行に行くことが出来ます。また、小学校の英語必修化や大学生の留学率増加などの教員分野に始まり、訪日外国人の増加、企業の英語公用化、2020東京五輪など。

日本人の英語をとりまく環境はここ数十年で大きく変わっています。

英語ペラペラではないとしても、そこそこ理解できる人の割合は、数十年前と比べ物にならないくらい増えたことでしょう。数十年前なら「英語で〇〇が出来るなんてすごい!」と言われ、それが仕事になっていたようなことを、今の若者はすらっと出来てしまう、なんて事も珍しくありません。

それに伴い、受験・留学・就活など、若者に求められる英語力は刻一刻と変わっています。

今の生徒たちが経験する海外留学は、「留学自体が貴重な経験だ」という親・教員の感覚で考えるものとは異なり、「留学の中で何を学び、具体的にどういう力を付けたか?」が重視されるようになっています。

事実、以前は貴重だった”海外留学経験”ですが、今では格安留学という選択肢もあり、留学経験者の割合はどんどん増えているのです。

進路指導を生徒・教員の両面から考える。

ここでは、現場の進路指導方法について、生徒・教員の両方の立場の生の声を紹介します。

理論的に考えることも大切ですが、実際に現場で行う進路指導とは人と人の関わりです。

「これが正しい」

と頭でわかっていても、理屈ではどうにもならない事もたくさんあります。

ぜひ、ご自身とクラスの生徒に当てはめてみてください。

進路指導:生徒の言い分。英語テストは英検?TOEIC?

私が中高生だった6~12年前、英語のテストと言えば英検でした。周りの友人みんなもこぞって【英検】を受けていました。

しかし、今では英検よりTOEIC・TOEFULが優勢になり「英語力証明のために効果的だ」として学生だけでなく社会人も、こぞってTOEICを受験しています。

英検優勢期に生徒だった私の言い分は、この通り。

特に英語を仕事にしたかったワケでもなかったのに「高3までに英検準2級合格を目指しましょう。」と言われ、ほぼ強制で英検を受験させられた。

そのうえ、今となっては英語の資格と言えばTOEIC。英検はほぼ無意味。

あんなに先生が勧めたから、いつか役に立つと思って勉強頑張ったのに~!

高校生の時に取得した英検準2級は、大学の推薦試験にはプラスに働いたかもしれません。

しかし、今現在、実際に使える英語力になっている感覚は全くありません。あの時に戻って、せっかく英語を勉強するなら、英検ではなく、就活や留学で優位になるTOEICの点数を取りたいとも思います。

進路指導:教員の言い分。進路指導は重過ぎる。

英検を取得した高校時代から4年後、私は教員になりました。

正確に言えば、教員免許取得のための教育実習ですが、その期間はしっかり責任を持って生徒の前に立ち、授業をし、ひとりの先生として生徒と関わりました。

その中で感じたことは、進路指導の難しさでした。

「こういう仕事をしたいんです。」

「ここの大学に行きたいんです。」

「推薦って、どういう事書けばいいんですか?」

と真っすぐに質問してくる生徒たちに、私も知ってることを全て教えるつもりで全力で答えました。

その反面、「このアドバイスで本当に正しいのだろうか?」という思いも拭いきれませんでした。

なぜなら、生徒は教員のことを「社会や受験について詳しい人」として認識しています。

  • この人の言っている事を聞いていれば成績は伸びる
  • この人の出す課題ができるようになれば受験に受かる

教育実習生でもそうだったのですから、現役教員となればなおさらです。だからこそ、【進路】という人生を大きく左右する選択のアドバイスを先生に求めくるのです。

大袈裟ではなく、その一言が生徒の人生を大きく変えます。

(実際に、私が担当していたクラスの子が、昨年私と同じ大学に進学し、晴れて後輩となりました!)

そして、私が進路指導に抱いた印象は【重過ぎる】でした。

授業準備に始まり、クラス担任の業務、部活動、学校行事、PTAや地域との連絡など、ただでさえ大変な教員の業務に、生徒一人一人の未来を決める進路指導を盛り込むには、大変すぎる業務内容です。

なぜ重過ぎると感じたのか?

それは、進路指導には二面性があるからです。

  • 親や学校に求められていること

  →「その生徒を良い大学に行かせること」「その生徒の学力を伸ばすこと」

  • 生徒に本当に求められていること

  →「今後どうやって生きていくか?のためのアドバイス」

似ているようで、全く違います。

先ほど私の英検の例で示したようなことは、資格だったから大した事ないですが、もし人生を大きく左右する「大学」や「就職」だったら取り返しがつきません。

最近「大学に入学をしたけど、自分が何をしたいか分からない。」「やりたいことがない。」という若者が増えていると言います。

その原因の一つに、

「親や学校に求められている進路指導(良い大学に行かせること、学力を伸ばすこと)が正しいものとして蔓延していること」があると思っています。

つまり、「生徒に求められている進路指導(今後どうやって生きていくか?のアドバイス)ができていないこと」が挙げられるではないでしょうか。

ただ、これを教員の進路指導のせいにするのもまた、重すぎます。

教員が生徒の進路を全てサポートして当たり前という意識は、教員たちを苦しめます。だからこそ、進路指導をする教員には「仕事の将来性」を一緒に考えてほしいと思うのです。

「将来通訳を仕事にしたい」という生徒がいたら、

「通訳がしたいなら、TOEICで〇〇〇点を目指して、〇〇大学に行くと良いよ。」

という親・学校寄りのアドバイスをする方法もありますが、

「今はあなたが使えるくらい身近にGoogle翻訳や通訳アプリがあるよね。これからもこの技術が発展するとしたら、通訳という仕事は、ゼロにはならないにしろ、多くはアプリで済むかもしれないよね。〇〇さんは考えたことある?」

というように、その生徒が生きる将来・生き方も見据えたアドバイスも必要だと思うのです。

本来なら、生徒が勝手に調べれば良い事ですが、先ほども言ったように、生徒は先生のことを「社会や受験のことをしっかり知ってる人」として認識しています。

先生のひとことは、その生徒の人生を大きく変えるのです。

学校教員にこそ、仕事の将来性を考えてほしいワケ

日々を過ごす中で「社会・世界の動き」を意識したことはありますか?

ロボットやAIに仕事を奪われる時代、若者は常に「社会・世界の動き」を意識する必要があると私は思っています。

単純に言うと、「社会のために自分は何が出来るか?」という事です。

「そんなことは、起業家が考えるような事だ」

そう感じる方もいるかもしれません。

しかし、先ほどもお話ししたように、今ある職業が徐々になくなる事を考えると、どうでしょうか。「社会のために自分が出来る事」を考えた結果、その「出来る事」が機械にも出来る事だったら?

一度考え直して、将来の方向性を変える必要がありますよね。方向性を変えるなら、早いに越したことはありません。

せっかく受験も試験も頑張ったのに、

憧れだった職業はロボットの役割になってしまった。。。

なんてことも、冗談じゃなく、あり得ます。

最後に

生徒がこれから先歩んでいく時代は、今までのものとは全く違った時代になるでしょう。

今までの時代を生き抜いてきた教員だからこそ出来るアドバイスと同時に、これからの時代を見据えたアドバイスも必要になってきます。

生徒が目指すその仕事はこの先も残っているのか?

明日からの進路指導に、少しでもこの視点を加えてみてください。

将来を一緒に考えてくれる先生がいたら、生徒はきっと嬉しいと思います。

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YURIE KONO世界を駆けるホースジャーナリスト
1994年生まれ、海外在住フリーランス。 24歳からヨーロッパ各国に住み、現地の馬文化にひたる幸せな日々。オンラインサロン「うまテラス」主催、ホースセラピー勉強会主催。