先日、パリのSalon International de l’Agricultureというフランス最大の国際農業祭典を取材してきました。
その取材中、馬好きの私も想像していなかったほど『フランス農業と馬』の繋がりを感じることができたため、ぜひブログに書こうと思いました。
<馬の可能性>を知ってほしい、という願いも込めて。
まず、Salon International de l’Agricultureとは?
まずは簡単にこのイベントについて簡単にご説明いたします。
Salon International de l’Agricultureとは、毎年パリで行われる国際農業祭典のことです。
会場内のブースはおおまかに、
- 家畜(牛・羊・豚・ヤギ)
- 家畜(馬・ロバ)
- 野菜
- フランス各地域の特産
- フランス国外の特産
- 農業サービス
- 犬猫などのペット
に分かれています。
ーーイベント取材時のブログより引用
フランス各地域からはもちろん、中東やアフリカの国々からもたくさんのブースが出展し、自分たちの国や地域の特産物を販売したり、自社ブランドの製品や飲食物を販売したり、家畜を身近に感じてもらうために子ども向けの体験コーナーを提供したりするイベントです。
当日は家族連れもかなり多いうえ、ワインやビール、チーズにサラミなどの大人が楽しめる品々もたくさんあり、あっちでは子どもたちの楽しそうな声が聞こえ、こっちでは大人たちがワインとチーズを持って歌ったり踊ったり。
業者向けの農業イベントというより、まさにお祭りのような雰囲気のイベントなのです。
各ブースの様子はこんな感じ。
チーズに。
サラミに。
食べ物もたくさん!
約1週間に渡って行われるこのイベントは、会場もかなり広く、去年はなんと900以上のブースが出展し、来場者は60万人以上を超えたそうです!
この記事では、イベント内で紹介されていた【フランスでの馬・ロバ】について、詳しく触れていこうと思います。
このイベントについてもう少し詳しく知りたい方は、ぜひこちらもご覧ください!
農業と馬って…関係ある?
「そもそも、農業と馬って…関係ある?」
みなさんの中には、このような疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
日本で農業・家畜と言えば、牛・豚・鶏が多くを占めます。
しかし!
馬と農業には、実は深~い関係があるのです!
”馬”と聞くと『競馬』や『乗馬』をイメージする方が多いかもしれませんが、馬は昔から人の生活を助けてくれる存在でした。
農業と馬のかかわりについて、いくつの例を挙げて馬の活用をご紹介します。
『農耕馬』
農耕馬とは、主に田畑を耕す馬のことで、人々が生きていくために必要なお米や野菜を作るために、とても重要な役割を担っています。
『耕す=土を掘り起こす』という作業は、もちろん人力で行う事も可能ですが、かなりの重労働です。
足腰にもかなり負担がかかりますし、一振りで耕せる範囲はクワの幅しかないため、田畑の規模によってはかなりの時間と労力が必要になります。
そこで活躍してくれるのが『農耕馬』。
<馬力>という言葉があるように、馬にはかなりのパワーがあります。
現在ではほとんどの作業が機械に変わっていますが、昔はこの耕す作業の多くを牛や馬などの動物に<スキ>を曳かせる方法で行っていました。
上の写真は、まさに農耕馬として馬やロバが働いている様子で、フランスでは ”フランス名産のワイン” を馬の力を借りて生産しているワイナリーもあります。
『馬車馬』
馬車というと、写真のような観光地のイメージや高級なイメージがあるかもしれません。
しかし、農業の分野でも馬車馬は重要の役割を担っているのです。
- 農作物に必要な水や肥料を、田畑に運ぶ。
- 収穫した野菜を、田畑から倉庫に移動させる。
- 生産物である野菜やミルクなどを、市場や加工場まで運ぶ。
など。
現代ではトラックや農工具が担っている力仕事を、昔は馬の力で行っていたのです。
農業で想像しにくい方は、現代の生活から、車や電車、自転車が無くなることを想像してみてください。
離れた場所への移動や大荷物を持っての移動など、様々な場面で馬が活躍できることが想像できるのではないでしょうか。
『荷駄馬』
『荷駄馬』(にだば)
あまり聞きなれない言葉ですが、簡単に言うと荷物などを運んでくれる馬たちを指します。
馬車と同じような意味で使われることもありますが、一般的には荷駄馬と言うと、背中に袋などを付けて荷物を運んだりする馬を指す事が多いです。
今でも車が通れない細い農道や、足元の悪い畑での荷運びで活躍しています。
ちなみに、この写真は、私は以前モロッコで見た光景です。
農業とは少し離れてしまいますが、おじさん(オレンジ色の服の人)とロバがタッグを組んで、ゴミ回収の仕事をしていたのです。
町のゴミ置き場におじさんとロバが来ると、おじさんがその場のゴミをロバの背中にあるゴミ箱に入れます。それが終わると、ロバも分かっているのでしょう。次のゴミ置き場にズンズン進み、おじさんはその後をついて一緒に歩いていきます。(ホルターなどは付いていません。)
その町は「町全体が迷路」と言われるほど道が狭い町だったので、車が普及した現代でもロバが活躍で来ていたのでしょう。
※その光景にビックリして見入るあまり、正面の写真が撮れておらずすみません!
ちなみに、この町にはロバタクシーもありましたよ。
馬の仕事は、機械に奪われた?
ここでは、少しデータ上のお話をしたいと思います。
機械に奪われたってことは、日本でも昔は馬がたくさんいたの?
その通り!
1930年代の馬飼育頭数(日本)
日本の昔のデータを見ても、農耕馬の普及率が分かると思います。
例えば1932年の飼養総数は154万頭で、うち約113万頭が農耕用、30万頭が馬車用である。
ーー北海道 日高振興局ホームページより引用
全体のうち、農耕用が約73%を占める。
現在の馬飼育頭数(日本)
平成26年(2014年)の日本国内の総飼養頭数は、約74000頭。うち、農用馬は5880頭、その他が68120頭(軽種馬・乗用馬・在来馬・肥育馬含む)。
ーー公益社団法人 日本馬事協会ホームページより引用
全体のうち、農耕用が約8%
近年の世界の馬飼育頭数
世界の馬の頭数の推移
- 2000年:5712万頭
- 2001年:5711万頭
- 2002年:5620万頭
- 2003年:5699万頭
- 2004年:5775万頭
- 2005年:5873万頭
- 2006年:5885万頭
- 2007年:5893万頭
- 2008年:5877万頭
ーー FAOSTAT, 2010より
世界ではむしろ増加傾向?
フランスには約84万頭、
ーーWORLD HORSE WELFARE AND EUROGROUP FOR ANIMALS調査より
このデータによれば、欧州で1番馬の頭数が多いようです。
フランスは国土も広く、農業や競馬、乗馬も盛んなため、このような結果になったのだと思います。
近年の日本の馬飼育頭数
日本の馬の頭数の推移
- 2000年:104000頭
- 2001年:105000頭
- 2002年:106000頭
- 2003年:102000頭
- 2004年: 97000頭
- 2005年:93000頭
- 2006年:87000頭
- 2007年: 84000頭
- 2008年:83000頭
ーー公益社団法人日本馬事協会 馬の総飼養頭数より引用
日本では確かに減っている。
日本と世界、馬飼育頭数の増減
そもそも、日本国内で飼育されている馬のほトンドは、競馬用のサラブレット。海外に比べてかなり多くの比率を占めています。
世界全体を見ると、競馬以上に乗馬やポニー、馬車馬などが多いため、飼育されている馬の品種も幅広いです。
フランス農業と、馬の関わり
「今回のイベントは、家族連れやレジャー目的の参加者が多いから、”馬”を取り入れているのかな?」
始めはそう思っていました。
ですが、「農業と馬」に深い関わりがあるからこそ、紹介されていたのです。その上、ロバやラバも馬と同じように活用されていることは大変興味深かったです。
中には、トレッキングの荷物持ちとしてロバや馬を利用している、ツーリズムとの組み合わせも!
世界には、競馬や乗馬以外にも、馬が活躍できる場面がたくさんあるんですね。
以下には、このイベントで見た馬の活用方法をまとめました。
- 馬搬:森から木を運び出す際(林業)に、馬・ロバの力を利用
- 馬ミルク/ロバミルクの生産
- けん引
- エコ放牧:馬やロバを放牧することで自然環境やバランスを整えること
- 地域馬としての活動
- レクレーション:乗馬や外乗、馬車、馬でワイン畑のガイドなど
- 自然環境を守る:森の中の倒木除去を行ったり、外来種調査などの自然の管理を行ったり、ビーチ清掃に同行したり
- 農耕馬:田畑を耕す
- 馬介在療法・教育:ホースセラピー、馬を用いた教育など
- ショーホース:ショーで人々を楽しませる
- 荷駄馬・ロバ:荷物を背中に乗せて運ぶ
- ワイン製造:耕作~収穫までの様々なシーンで、馬の力を使ってワイン製造をすること。
- 馬肉 など
詳細に興味のある方は、是非こちらのホームページもご覧ください!
英語表記もありますし、写真を見るだけでもかなり面白いと思います。
フランス原産の馬・ロバの品種
みてください、この素敵なポスター!
このように、フランスには、原産とする馬やロバがたくさんいます!
日本にも在来馬がいますが、頭数が少なかったり、自治体からの補助等が少なくて世話や維持がかなり大変だったりもするようです。
フランスでは、馬も文化の一つとして守ろうと言う考えがあって、あえて馬を活用するといった姿勢もあるのかもしれませんね。
以下は、軽種馬と重種馬の原産マップです!
まとめ
産業革命が起き、多くのものが機械化された現代でも、馬やロバを活用するフランス。
食の国として、農業大国として、素材となる農業分野を重視し、人々も農業の大切さと共に馬やロバの価値を理解しているのかもしれません。
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